以前は看護師をしていた私ですが、今は医療とはかけ離れた業界にいます。
転職活動では異業種への挑戦となったため、「どうして新しい仕事をしようと思ったんですか?」とか「別の場所で看護師をしようとは思わないんですか?」と聞かれることはとても多かったです。
そんな中、「どうして看護師になったんですか?看護系の大学に進んだのはなぜですか?」という、不意を突いた質問をされたことがありました。
転職面接で、前職での経験を聞かれることはよくありますが、前職を目指した理由まで聞かれることは少ないのではないでしょうか。
この質問をされたことで私は高校時代の自分を思い起こし、何で看護系大学に行ったんだっけ・・・?と改めて考えるきっかけをもらいました。
少し昔を振り返りつつ、私が看護師を志した理由を書いてみようと思います。
転職面接で聞かれた「どうして看護師になったんですか?」
どうして看護師になったんですか?
この質問があったのは、海外の外資系企業の英語面接を受けた時でした。
その時の私は海外転職を目指し、転職活動真っ只中。
いろんな国の求人情報を調べては面接を受け、の繰り返しでした。
異業種への転職を希望していた私は、ほぼ全ての面接で「なぜ看護師ではなく異業種に挑戦したいのか」という趣旨の質問をされました。
そんな中、あるひとつの企業の面接で「Why did you become a nurse?(どうして看護師になったんですか?)」と聞かれた時は、一瞬うろたえました。
看護師になった理由が正直分からなかったからです。
そうは言っても面接。
それらしい答えを返さねばと思い、絞り出した答えは「Because I like interacting with people and I wanted to work in a team.(人と関わる仕事がしたかったからです)」でした。
人と関わる仕事なんて世の中いくらでもある、と思われたに違いありません。
でも、面接で堂々と披露できるほど立派な「看護師になった理由」は、私は持ち合わせていませんでした。
看護師になろと思った理由を思い起こす
進路選択を迫られた高校時代を思い起こしてみました。
何で看護系大学に進んだんだっけ?と。
今となっては遠い昔の話なので、あの面接で聞かれていなかったら、考える機会もなかっただろうと思います。
私が看護師になろうと思った理由は多分
- 学力がなくても大学に入れるから
- 看護師免許があれば一生食いっぱぐれないから
- 看護師を勧めてくる母親に流されたから
といった、どうしようもない理由ばかりだったと思います^^;
挙げれば他にもありますが、それは決して「人のためになる仕事をしたいから」なんていう立派な理由ではありません。
理系進学校に通っていた私は、優秀なクラスメイトが推薦やAOでどんどん有名大学に受かっていくのを見て、みんな遠い存在だなと思っていました。
日々の授業についていくのがやっとだった私には、有名大学を受験しようなどという気持ちすらなく、大学受験はまるで他人事でした。
それでもどこかの大学に行きたいという気持ちはあり、そしてその「どこか」として一番に候補に挙がったのが看護系大学でした。
文系でも理系でも受験可能で、偏差値も高くない。
看護師不足が深刻なこのご時世、一度看護師免許を取ってしまえば、たとえ退職したって復職も簡単だろう。
そして看護師は稼ぎが良いと信じて疑わない母親も、看護系大学を勧めてくる。
そんなどうしようもない理由を並べ、将来は看護師になろうと決意したのは高校三年生も後半に差し掛かった頃でした。
進路を決めてからはすぐに受験の準備に取り掛かり、看護系大学にはすんなり合格しました。
これは今だから言えることかもしれませんが、合格通知を手にした時、やっぱり看護系大学の受験は簡単だな、と冷めた気持ちでいたような気がします。
不純な動機だったけど、看護師になって良かった
どうしようもない理由から看護師になった私でも、看護師の仕事は好きでした。
「人のためになりたい」とか、「貢献したい」といった誰が聞いても立派な理由は何一つ持ち合わせていなかったにも関わらず、仕事はとても楽しかったです。
もちろん、難しい場面、大変なことは数え切れないほど経験しました。
それでも看護師の仕事は楽しかったです。
それは多分、看護師をしていなかったら出会えない人にたくさん会えたからだと思います。
小さな赤ちゃんや働き盛りのサラリーマン、そしてまだまだ元気な100歳まで。
全く異なるバックグラウンドを持った患者さんと365日顔を合わせ、自分にはない考え方に気付かされたり、思いを共有し合ったり。
病院で出会う人はみんなそれぞれ病気やケガと闘っていますが、それでも笑顔を絶やさず「看護師さん、いつもありがとう」と言ってくれる人もいます。
そんな言葉ひとつにどれだけの元気がもらえることか。
看護師になっていなかったら気付けなかったであろう小さな喜びや、人の痛み、患者さんから教わることはとても多かったです。
働き始めてからというもの、私は自分が看護師になろうと思った理由なんてすっかり忘れ、目の前の人との時間を大切にする、ということに必死になっていました。
最終的には退職して別の道に進むことにしましたが、退職時には「あー楽しかった!看護師になって良かった!」と達成感でいっぱいでした。
看護師になるのに明確な理由は必要ない
人に話せるような立派な理由もなく看護師になった私ですが、今また看護師に戻るとしたら「人と関わる仕事がしたいから」を理由に挙げると思います。
転職面接の時に答えた、どこにでもありそうな抽象的な理由です。
でも、一度看護師を経験した今となっても、看護師になりたい理由というのははっきり言って分かりません。
むしろそんな明確な理由は必要ないのかも、とも思います。
もし高校生の時の私が「人の役に立ちたい」、「困っている人を支えたい」という理由から看護師になっていたら、理想と現実のギャップに耐えられず途中で挫折していたかもしれません。
それくらい過酷な場面はたくさんありました。
少し曲がった考え方ですが、「どうしようもない理由」があったおかげで過酷な場面でのショックが抑えられ、物事を前向きに捉えることができたのではないか、と思っています。
そして、看護師という仕事に期待を抱いていなかった分、仕事が楽しいと感じる場面では人一倍楽しめたように思います。
こんな理由で看護師になってもいいのかな?
こんな動機で看護師になって仕事は続けられるかな?
そうやって悩んでいる人もいるかもしれませんが、私のようにどうしようもない理由を掲げて看護師になり、達成感でいっぱいの中、退職する人もいるんです。
何かを決意するのに、立派な理由は案外必要ないのかもしれません。
それに、理由は後からでも見つけることはできます。
「私が看護師になったのは、こういう理由だったんだ」と。
私はこの、どうして看護師になったんですか?というとてもシンプルな質問に、いろんなことを考えるきっかけを与えてもらいました。
みんないつも立派な理由を求めて生きているような気がしますが、私はこれからもどうしようもない理由と一緒に生きていくつもりです。